ポルノグラフィティが好きだった
中学生の頃、何気ない車内。
父親がいつも聞くジャズとは違う音楽が流れていた。
5つ離れた兄が借りてきたアルバム『foo?』だった。
以来、およそ高校を卒業するまで、好きなアーティストは?と聞かれたらポルノグラフィティと答えていた。
ポルノはカップリングがいい。シングル曲は直感的だけど、カップリングは少し淫美な雰囲気を漂わせる曲が多く、繰り返し再生してしまう。
シングル『アゲハ蝶』のカップリング「別れ話をしよう」がそれだ。
明確に経験に基づいた描写で、中学生の僕にはわからなかったけれど、今なら情景が脳裏に浮かぶ。
テーブルのキャンドル 君を淡くぼかして
この店を選んで良かったと思った
別れ話は戦略的だ。ビジネス交渉に近い。できるだけ角を立てず。傷つけないように。
逆説的だけれど、相手の顔を見ないほうが上手くいくんだろう。当人たちのことなのに。このフレーズだけとっても様々な想像が掻き立てられる。
この煙草を消したら 席を立とう
二人の時間が終わる 灰になってく
空のグラスに目配せをするバーテンダー
少し迷って「同じのを」と答えた
このこおり 溶けるまで 恋人でいようよ
モウヒトトキ
甘い二人の時間の終わりはあっけなく、簡単に訪れるものであるとしても、それを決めるのは「僕」だ。物事を始めるのは容易いが、終わらせるのはとても難しい。
タバコ、氷、探すのはいつも言い訳ばかり。もう少しだけこの時間が続けばいいのに、と思う心境が痛いほど伝わってくる。
店を出たとき、愛した人はもう遠い存在。漂うのは新しい世界への希望というよりは後悔。恋人との別れが官能に描写されていて、心を揺さぶる。
言葉にするのは難しいけれど、言葉にすることで気付くことができる。文章を書こう